子どもの頭のよさを引き出すフィンランド式教育法

この記事を機に、書評を始めることにしました。僕は中〜高校生の頃には本を読んでいましたが、久しく本から離れていました。Web関連の教本やカフェで雑誌を読むぐらいの生活が続いていましたが、最近になって「活字を読む」ことが楽しく思えてきたのです。

よく思い出して考えてみると僕は活字が好きな子どもでした。そういえば、小6の頃によくサッカー雑誌を買ってきてそれを読みまくるということをしていて、ヨーロッパのクラブチームのフォーメーションや選手などの情報をすべて暗記していましたw

高校生になると、村上春樹などを読んでいました。今よく考えると、好きなのか好きじゃないのかよくわからないですが、好奇心旺盛だったので読み漁っていました。

その僕がいつのまにか本を読まなくなりました。「言葉を信じなくなったから」です。いつの日からか、言葉では人は救えないと悟ってしまい、どうでもいい存在になっていきました。

でもこの歳になって変わってきました。ひとつひとつの物事を丁寧に行い、考えるということの重要性がわかってきたからです。僕はすべてのことに対して感覚で生きてきました。勿論、元々論理的なタイプの人間なので理論的なことも理解してきたつもりですが、いつもわりと感覚任せで生きてきました。そのせいであまり形にすることが苦手で色々できるのに活かせれてないという悪循環を招いてしまっています。(僕みたいな色々吸収したいタイプは回り道をしがちです。)

なのでそれではいけないと思い、色んな意見に耳を傾けることにしました。そして、そのおかげで色んなことができるようになってきました。色んな意見や、考え方、知識を取り入れることによって成長できるとわかったのです。

今回が初めての書評となりますが、まぁ自分なりの解釈にはなってしまいますが、「こんな本もあるんだ」と思って頂ければ嬉しいです。

子どもの「頭のよさ」を引き出す フィンランド式教育法 – 小林朝夫

たまたま読むことになった本なのですが、読み始めると凄く「共感」できる本だなぁと。そもそもフィンランド式の教育法なんて興味を持ったことは今までなかったですが、よくある世界のランキングでフィンランドの子たちは毎年上位に来るイメージはありました。算数はインドが最強なのは有名ですが、フィンランドは総合的に上位を独占し続けています。要は、バランスがいいのです。

しかしながら、フィンランドではそんなにガチガチな教育はされてないようです。本に書いてあるのですが、「フィンランドは宿題がない(強制ではない)」「家族との時間、会話を大事にする」などをはっきりいって「超ゆとり教育」が実施されているようです。日本では最近まで「ゆとり教育」が行われてきたせいで学力低下がどうのこうのまたおっさん達が言い出したせいで結局廃止になってしまいました。

僕も途中からですが、「ゆとり教育時代」の人間です。日本ではゆとり教育が始まってから学力が低下してしまったのに、何故フィンランドの子ども達は学力をキープしていられるのか。そんなことにフォーカスを当てた書籍となっています。

1.学力を超えた力が”頭のよさ”を引き出す?

フィンランド式教育法に学ぶ

そういえば、フィンランドブーム?があったような、なかったような。これは一体、具体的にどんなことなのでしょうか。

この書で出てきたワードがあります。

「森」「家族」「会話」「褒める」「親」「知識バカ」

このワードに共通するのは主に日本人に欠けているものを表しています。

例えば、「森」という言葉で説明してみます。日本では自然と共生するということはほとんど考えとして消えてしまっています。最近の東北地方の防波堤問題と同じですね。自然と共生することの重要性を著者は訴えています。フィンランドでは自然があって人が存在するという考え方を持って生きているそうです。国民が自然を愛しているから自然をキープでき、それが人間性・知性へと繋がっています。

次に、「家族」「会話」。フィンランドでは家族の時間を大事にします。
でも反対に、食事中に喋ることは礼儀として良くないと考えているので会話はしません。メリハリがあるということですね。家族の間でよく行われているのは単純で、しつけをしっかりすること。そして、「褒める」ということ。

そして「自分で考えさせる」ということが最も大事な教育だと考えています。要は「いつでも考える癖」をつけるということ。それがなく、ただ暗記してテストで良い点をとることだけを求められる日本では「知識バカ」を量産してしまうと著者は考えています。

「わからない」をその都度わかるまで調べ、理解していく。その積み重ねがフィンランドの学力の高さ、知識バカで終わらない柔軟な思考の人間が多いのだ。

2.よりよいものを生活に取り入れる柔軟さ・意識の高さ

フィンランド式教育法に学ぶ

フィンランドとは北欧と呼ばれ、ヨーロッパの中の一つの国として位置づけられていますよね。なので一昔前までは当たり前のように自宅の中も靴履きで生活していたようですが、数十年前から日本式の「室内は靴を脱ぐ」習慣が当たり前になったようです。

理由は簡単です。「その方が部屋が汚くならなくて良い」からです。このように、フィンランドの人は柔軟な思考であるということがわかります。

よいものは取り入れ、問題だと思うことがあれば改善する。そんな思考回路だからこそ、物事を色んな角度から捉えることができ、結果として効率の良い教育ができているのだと思います。

その上この著書の時点でだが、フィンランドの穀物自給率は114%に達しているそうで、人口が少ないとはいえ国土の7割が湖のフィンランドとしてはこれは奇跡に近い。

フィンランドには「自分たちの食べる分は自分たちで作る」という言葉がある。

この精神からわかるようにとても精神の意識が高い。日本ではスーパーに行って食料を買うのが当たり前になっているが、実際は自給率がとても低い。当時の穀物自給率は28%だそうですが、現在も改善はされていないのが現状です。この問題はとても難しい問題だが、水や国土に恵まれている日本としては悲惨だ。

3.効率さを求め、無駄を省く

フィンランドでは自然と共生するということが大切なことだと考えられています。その為、車などの排気ガスを嫌います。ならばどうしたかというと、円型の街づくりをして効率のよい交通網をつくりました。その結果、車の利用料は減り環境に配慮した街になりました。

そのようなことから、フィンランド人は無駄を嫌うということがわかると思います。日本ではどうでしょうか?利権や経済が複雑に絡み合い、無駄は多いし効率の良い国にはなっていません。ただ、経済が豊かなだけです。

無駄だと思うから、改善する。効率が良い方法を見つけたら国が変える。便利なものがあったら積極的に取り入れる国民性だということがわかりますね。また、フィンランドの政治家はサラリーマン程度の給料だそうで、とても日本とは違うようです。なりたいから政治家になる人が多く、その結果スピーディーで効率の良い政治が行われているようです。

4.勉強が”成果”に結びつかなくなった日本

ちなみに僕は高卒です。特に理由はありませんが、高卒です(笑)僕は初めから日本の教育には疑問を持って生きてきました。確かに今になって、勉強できることは幸せだなと思いますが、学校で勉強したことが成果に繋がったことがあるかというと・・・という感じですね。

それよりも、「自分で考えたこと・自発的な学習・自分がやりたいことをやる」このようなことをしたことによる成果の方が大きいと感じています。

僕の話をします。僕は小学校の頃からわりと”優等生”といわれる部類で勉強に困ったことはありませんでした。毎週休日には必ずソフトボールチームの練習に行き、大会に出たりと忙しい身でした。そんな中でも学力は良い方で、テストではコンスタントに90点台。普通に100点もとれるほどでした。

でも塾に通ったことはありませんし、テスト勉強などしたことはありませんでした。寧ろ、学校外でのソフトボールチームで色々学んだり、活発に動いて何かを得るということが自然に出来ていたのだと思います。

この本にも書いてありますが、自発性がなければ勉強ではないということは事実だと思います。ただ暗記するだけの勉強は無意味です。確かに、興味のないこともトータル的に勉強することは大事ですが、考え方を変えるだけで面白くなると思いました。

まわりの同級生も就活をがんばっていましたが、やりたい仕事に就けた人は少ないように思います。そのような結果からみても、自発性は教育を超えるということが分かるかと思います。

5.家族の中でも教育するということ

フィンランド式教育法に学ぶ

あとこの本では「家族教育」というものにフォーカスを当てています。僕は祖父・祖母と一緒に暮らすいわゆる「大家族」の中で育ちました。父母がいないときには進んで関わってくれたのでそのおかげで幼稚園児の頃にはアルファベットを全部覚えて言えていたし、算数やものづくりなど色んなことを学びました。小学生の頃にはスポーツにも進んで関わっていてくれたので、クラブ活動もしやすかったです。

当時はしつけが厳しく、怒られることも多々ありましたがそのおかげで、その苦痛も礼儀正しい人間になれた要因だと思っています。

ここまでは僕の話を書きましたが、この著書ではこういったことが引き合いに書かれています。つまり、学校で学べることなど実は大してないということです。学校はあくまでも義務教育なのでカリキュラムに沿って学びます。良い教師に出会えればそれは幸運なことですが。

つまり、本当は「家族」の中で教育するということが一番大事だということです。フィンランドでは仕事が終わるのが早いので、家族の時間を大事に過ごすそうです。「なにがあった?」など会話をすることで豊かな心へと育ちます。あとは豊かな自然と一緒に暮らすことで「感じる心」を養うことができるのです。

日本ではそういった環境をつくりづらいのは事実で、残業など長い労働時間、核家族化など様々な問題がつきまとうわけで。フィンランドのようにはいきませんが、学ぶこと・意識することは多いと感じました。

6.豊かな発想を生むフィンランド教育

フィンランド式教育法に学ぶ

ここにフィンランドの子どもが書いた一枚の絵があります。一体なにを書いたと思いますか?実は・・

『自画像』なんです(!)

「えっ!?」と思うかもしれませんが、実は凄い発想力で書かれています。

この画は自分を樹に例えています。一番上にはフィンランドの国旗が描かれたランドセルがぶらさがっていますし、身近なものが乗っかっています。

これは自分を木のように例えて、寂しさや沈黙さのある自分を表しているようです。

この著書に書いてあるとおり、日本の小学生に「自画像を書きなさい。」と指示したら必ず自分の顔に似せて書くに決まっています。まず、日本はまわりに合わせるということが当たり前です。一人違うことが恥ずかしいと思ってしまうのですね。日本の教育ではこんな発想ができる子は育たない環境だということが書かれています。

これは「フィンランド教育のたまものだなぁ。」と妙に感心してしまいました。

7.国語力を身につける大事さを理解するべし

最近では特に国語力の低下が指摘されています。「活字離れ」という言葉があるように、字を読む・書く機会が減っているのは事実ですね。また、スマートフォンやPCが当たり前になっているこの時代では字を書く機会が減っています。

でもこの問題は、子どもの頃から「意味を考える」「理解をして上で知識を身につける」などのことができていれば確かにそのような問題はないのではないかと僕は思いました。理解してれば問題はないはず。

大人になってからでは遅いのです。もちろん大人になってから学ぶことはできますが、身に付けるのは用意なことではありません。僕も正直、ブログではキーボードをタイピングして書きますし、ノートもペンも使うことはあまりありません。しかしながら、文章は書けます。

それは何故か聞かれたら幼少の頃から「自分で物事を解決してきた」ということ、「家族で教育する環境」があったからだと思います。決して、テストで良い点をとってきたからなんて1ミリも思いません。この違いは思いの外大きいことだと思います。

本にも書いてあるように、勉強は24時間できます。睡眠を8時間だとしても16時間残りますが、勉強したことは睡眠時に整理されるということなので24時間ですね。

あとこの本で指摘されていることで気になったことは「英語教育」は「国語教育」があってすべきだということですね。母国語で豊かな表現ができない人が英語を学んだところでたかが知れているということです。

国語力が一番大事だということ、自分で物事を考える習慣を付ける教育をすべきだということが書いてありました。

8.親を見て子は育つ

フィンランドでは子どもを育てる中で気をつけていることがあるそうです。それは、親が子どもの見本になるということです。例えば、「疲れた」「めんどくさい」などと言う親を見て育った子は同じように「疲れた」「めんどくさい」言う子に育つ可能性は大きいです。逆に、親が子どもの見本になり、「疲れた」ではなく仕事で経験した話をしたり、どこかにハイキングに連れて行って自然に触れさせたりすれば自ずとポジティブな子に育つ可能性は高いです。

そんなことが書かれているのですが、実はもっと大事なことがあるようです。それは、「親も努力する」ということです。いくら子どもに、「勉強しなさい」などと言ったところで説得力はありません。しかし、逆に子どもに軽く勉強や物事を当たり前に説明できたり、礼儀がわかっている親ならば、子どもは「すげぇー。」と頷くはずです。

フィンランドの人は礼儀を最も重視するようです。寧ろ、礼儀がしっかりしていなければ、他のことが優れていても認めないスタンスで教育をするのです。その結果、礼儀がしっかりとした、知性を兼ね備えた教育ができるということでしょうね!

また、フィンランドでは情熱を持って接する教師が多く、先生になりたくて教師になる人が多いそうです。その辺は日本と違うかもしれません。日本では職業のひとつとして教師がある感覚で、全員が情熱があるかというと疑問です。この本で紹介されていますが、小テストやプリントでごまかして楽をする先生は多いそうです。たしかにそんな経験があったようななかったような(笑)

まとめ

そんな素晴らしい環境で学び、感じ、豊かな自然に触れているからこそ「学力も高い」子どもが多いのではないでしょうか。日本では豊かな自然に触れるのには車を使わないと触れることができない環境ですし、なかなかフィンランドのようにはいきません。そもそも、人間の質が違うと思いますし、礼儀正しく知性のある日本人といえどもなかなか豊かな感性のある人は少ないとも思います。

しかしながら、子どもたちなら教育次第で白にも黒にもなるのかと思いますし、僕ら大人もここで書いたような事を意識して生きていけばより良くしていけるんじゃないかと思います。

日本でできる最善な教育とはなんなのか・・まだまだ課題は多そうですがこの本などのフィンランド式教育法を学ぶのはかなり大事なことだと思いました。

紹介した本と関連する書籍

あとがき


よく考えたら僕はフィンランド式教育に近いものを受けてきたんだなぁ・・と思いました。
それは当たり前のことではないでしょうし、恵まれているともいえますが、一番大事なのは自分で答えを導き出すということですね。最終的には自分で考え、解決するということができる人は強いです。